子供の扱いについて
親権・監護権
【親権】
親が未成年の子に対して有する身分上及び財産上の養育保護を内容とした権利義務のことをいい、婚姻中は夫婦が共同して行うことが求められています(民法第818条第3項)
しかし夫婦が離婚した場合は共同で行うことが無理であるために、民法第819条第1項により、協議離婚の際には父母のいずれかを親権者に指定することがもとめられています。
そして、裁判離婚の場合は、離婚を認める際の裁判所が親権者の決定もなすこととなっています(民法第819条第2項第5号)尚この場合、子が満15歳以上の場合は必ず子の意見を裁判所が聞いた上で決めることが求められています(人事訴訟法第32条第4項、家事審判規則第54条、第70条)
【監護権】
親権のうち、子の身分上の養育保護(子の教育義務)に関する部分の親の権利義務を監護権といいます。そして、これについては民法第766条第1項により離婚の際に協議することとなっています。
しかし通常は親権の一部に当たるため親権者の選定がなされれば自動的に決まることとなります。
【親権、監護権の分属】
前述のように監護件は親権の一部となるため、通常は夫婦いずれかの側に帰属するものです。
しかし民法第766条で監護権を決めることができるとの規定がなされていることから、親権と監護権を分離し別々に有することも可能となります。
そして実際に離婚協議の際にどちらが子供を取るかで争いになる場合も少なくなく、その妥協的な解決策の手法として、親権と監護権を双方共に割り振って処理をする場合もあります。
しかしこの処理は少なくとも子の養育に対する考え方について夫婦に共通の認識や価値観がある場合に限られ、安易に分属させることは、将来的に紛争の元を作りかねない可能性があるため充分な注意が必要になります。
【親権者等の選定基準】
親権は、子供の正常な成長のために養育保護のためにあるもので、そのため基本的には、子供の利益のためには、どちらに親権を持たせた方が良いかとの判断で決められるものです。
その具体的な基準としては。
- 双方の経済状況
- 双方の住環境
- 双方の子供に対する愛情
- 双方の親の肉体的・精神的健全性
- 子供の年齢
- 子供が住むことになる場所の環境の持続性
- 子供に対する安全性
上記の事柄を総合的に判断します。
そして離婚に至るまで調停、裁判等で期間を要した場合、その時点で監護している側が適当とされる場合が多く、また未熟な幼児、児童の場合には母親の愛情が必要であるとして、母親側が適当であるとされる場合が多いのです。
しかし前述の通り、満15歳以上は法律上子供の意見を確認する必要が定められており、また15歳以下でも10歳程度からは、本人の意見を尊重する必要があると考えられており、必ずしも母親側が適当と判断されるとは限りません。
また子供が二人以上の複数の場合には子供の成長を考えて兄弟を分離することなく、どちらか一方で監護すべきであるとされるのが一般的です。
但し、経済事情や住環境、子供の年齢の面等から、兄弟の分離も認められる場合もあります。
【親権者等の変更】
民法では、一度決まった親権者を他方に変更することができる(民法第819条第6項)
とされています。
そしてこの場合は、親権者選定の時とは異なり、双方の届出では手来ません。
それは家庭裁判所の審判、調停によらなければ、ならないこととなっています。
(家事審判法第9条第1項乙類第7号、第17条)
これは、親権が子供の成人に達するまでの相当長期間に及ぶことが予想され、その間、双方の病気等の身体的状況や経済的状況等を含めた生活状況が著しく変化している場合があるためであり、そのまま放置すれば、子供の不利益になると考えられる時は、他方の親だけでなく、子供の親族からも申し立てができることとなっています。
また離婚後、親権者となった者が死亡した場合にも、民法第838条第1号では、後見が開始されることとなりますが、他方の親が健全で子供の養育保護を行うことに問題がない場合は、親権者変更の手続も可能と考えられています。