養育費
養育費の意義
養育費とは、未成熟の子か社会人として独り立ちできるまでに必要とされる費用で、内容的には、食費等の生活費用、医療費用、教育費用等となります。
民法には直接的に「養育費」という用語の法文はありませんが、民法第760条(婚姻費用分担等)、民法第752条(夫婦間の扶助義務)、民法第766条(監護費用)等がその対象となると思われます。
尚、ここで言う未成熟の子とは、未成年者のことではなく、社会的にも経済的にも独立して生活し得ない状態の者のことを意味します。
当然に未成年者であっても結婚していれば、16歳であっても未成熟の子とは言いません。
また、逆に成人に達していても大学などに通っていて学費等の資金的援助が必要な状態の者は未成熟の子として養育費の対象となり得ます。
養育費請求の根拠
未成熟の子の養育費等の請求方法としては、子供が自ら民法第877条の扶養料を請求するとする方法があります。
また子供を監護している親が(親権者)他方の親に対して、民法第766条の監護に要する費用という形で請求する方法もあります。
子供からの請求であっても、親からの請求であってもいずれも、家事審判法第9条第1項乙類事件として、調停、審判で解決を図ることとなります。
尚、子供が未成年の時には親権者側からの監護費用請求という形を、子供が成人に達している場合は、子供自身が自ら扶養費の請求という形をとるものと思われます。
養育費の始期と終期について
養育費の支払い義務の始期については、夫婦が別居を始めた時からといった考え方もありますが、余りに長く別居して請求もしていなかった金額を、急に別居開始時まで遡って請求できるとすることには、長い間請求の権利を行使しなくていて、突然に請求の始期を別居開始時までとすることは、請求する側はともかく、支払う側の立場から考えると、「なぜもっと早く請求しない?」と考えることは当然であると思われます。
現実的な交渉では、無理に支払い者側の感情を悪くせず、今まで請求していなかった間の苦労等を理解して頂いて、請求をなした時からの支払いの方法を円滑に進める方が現実的かつ妥当な方法と思われます。
終期については、18歳や成人に達する20歳までと区切ることが多く見受けられましたが、現在では大学まで進学することも少なくなく、親の収入・学歴・子供の能力等から、大学卒業まで養育費を負担するといったケースも珍しくなくなってきました。
養育費金額の認定の方法
養育費は、それを支払う親の生活水準と同レベルで子供が暮らせるように調整し算出することが基本と考えられています (生活保持義務)
そのために、養育費の金額については、先ずは双方の親の収入からそれぞれの、生活を維持するために必要な費用を控除した金額を算出して、一方子供に必要な養育費を算定し、先の双方の算出した割合に従い負担額を決めるといった方法になります。
しかし、親の自らの生活に要する費用の算出については、その生活状況等、特殊事情等(高齢の親・障害のある身内の援助等)など個別に考慮すべき事情が多数あることから算出が非常に難しくなる場合が見受けられます。
そのために、最近では、婚姻費用分担のところでも述べたように、各裁判所で簡易迅速に計算ができるように、一定の割合をあてはめて算定できる計算式等が使用されている状況があります。
尚、子供が小さい間は(小学生低学年ぐらいまで)実際にかかる費用として、月々に5万円~7万円程度で解決している場合が多数見受けられます。
しかし、子供は小学生の後半では、塾など各種の習い事に行くなど、食費等以外でそれなりの出費を伴なうこととなります。
最近では、高校入学の際には月々の支払いの他に、「金○○○万円を支払う」等の取り決めをする解決方法も見受けられます。
前述のとおり親が医者等であって、子供に能力があり高等教育を受けることを望む場合には、実社会では審判、調停などをせずとも子供の教育費を負担している場合もあります。
全て各家庭とその経済状況を考慮しないと、何年も月々の支払いを履行してもらうためには、余り無理のない支払い計画の提案が理想的だと思われます。
全ての家庭ごとにケースバイケースですので他の家庭の養育費は参考までにとどめて、支払い者側が納得できる金額とその支払い名目を考慮することが肝要と思われます。